お嬢さまですもの!
     * * *


「芽亜里お嬢さま、大変失礼いたしました」

「お許しあそばして、芽亜里さま!」


 別室で着替えてきた雪平先輩と宝来先輩が謝った。

 雪平先輩は例の黒いスーツ、宝来先輩はグレーのドレスだ。

 ふたりはそれぞれ、執事とお嬢さまモードになっていて、さすがだなぁと感心してしまう。


「まあ……反省しているようですので、良しといたしましょう。それで雪平、こちらのお客さまが何か……?」


 入部テストのときと同じで、ソファに九条先輩と宝来先輩が横並びで腰かけて、わたしはその向かい側に座っている。

 わたしたちの(かたわ)らに姿勢よく立っている雪平先輩が口を開いた。


「はい。こちらは一年の加賀美桜子さまです。先日、入部テストを受けられて……」


 わたしに先輩たちの視線があつまる。


「ああ、覚えておりますわ」


 九条先輩がうなずけば、宝来先輩は冷ややかな笑みを浮かべて、
「思い出しましたわ! 『すみません』を多用してらした方ですわね。ご自分に自信なさそうに見えましたけれど……」
 と言って、マカロンがのっているお皿をわたしの方へ押しやった。


「おひとついかが?」

「あ、いただきます」


 今度は断わらずに、一つ食べた。

 さわやかな甘さが口いっぱいに広がる。

 なんだか悔しいけれど、おいしい……。
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