お嬢さまですもの!
「桜子さまは、ミレーヌさまをご存じのようです」


 雪平先輩の一言で、部室の空気が一変した。


「なっ……!?」


 九条先輩は、ティーカップを口につけたまま固まってしまった。


「……そ、それは……どういうことですの……?」


 マカロンを口に入れようとしていた宝来先輩は手を止めて、とまどいながらたずねた。


「加賀美さん。くわしくご説明いただけますかしら?」

「はい」


 九条先輩にうながされ、わたしは話しはじめた。

 忘れそうになってもまた思い出す、大切な記憶――。

 近所の公園でかのんたちにいじめられたとき、突然現れて、わたしを助けてくれた外国の美少女。

 ミレーヌと名乗ったその美少女は、濃い青のドレスに身を包み、美しい日本語を話し、その堂々とした振る舞いには気品があふれていた。

 ミレーヌがわたしのケガを魔法で治してくれたこと。さらに執事のアルフレッドも魔法で馬車を出して、ミレーヌを乗せて去っていったこと。

 そして、わたしの手元には、ミレーヌが涙をふいてくれたハンカチが残ったこと。

 記憶がおぼろげになっているところも含めて、すべて説明したんだ。

 わたしが話し終わると、真剣に聞き入っていた九条先輩と宝来先輩は顔を見合わせた。


「芽亜里さま、間違いなくミレーヌさまですわね」

「ええ、そのようですわ」


 宝来先輩に言われて、うなずいた九条先輩が、わたしに向きなおる。


「あなたの憧れのお嬢さまが、まさかミレーヌさまだったなんて……」
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