お嬢さまですもの!
「まあ、いきなりこんな話を聞かされても、困ってしまうでしょうけどね……」


 杏奈さまが腕組みして言うと、芽亜里さまも眉を下げた。


「異世界交流している画像や動画があればいいのでしょうが、情報流出をふせぐ意味でも記録の保存は禁止されているのですわ」


 理央くんは、異世界への扉になっている姿見を見つめながら、首をふった。


「いえ、みなさんの話を疑っているワケじゃありません。異世界交流しているのだとすれば、僕が『お嬢さま部』について疑問に思っていたことの説明がつきますしね。とにかく、町を代表して外交官になれるのは名誉なことです。……ね、桜子ちゃん?」

「う、うん……」


 あっけらかんとして、わたしにほほ笑みかける理央くん。


「――ところで、このメイド服はどなたのものですか?」


 理央くんの問いには、雪平が答えた。


「グランツ伯爵家でメイドをしているエマさんが提供してくれたものだ。メイドになりたい部員もいつか入ってくるだろうと……。しかし、それが男子だとは予想もつかなかったけどな」

「あはは。エマさんに会って、いろいろお話を聞いてみたいですね」

「ああ、お茶会のときに会えるはずさ。まっ、それまでにメイドとしての基本的なマナーを俺が教えてやる」

「よろしくお願いします!」


 理央くんが腰を折って礼をすると、芽亜里さまがパン! と手を合わせた。


「これで新入部員がふたり! 『お嬢さま部』存続の危機は脱しましたわ! 桜子さんはお嬢さま、理央くん……じゃなかった……理央はメイドとして活動してもらいます。我が部のモットーである――装いも、心も美しくあれ。瞳に映るものも美しくあるように――を胸に、精進(しょうじん)してくださいませ」
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