お嬢さまですもの!
 それにしても……理央はセーラー服を着ていても、メイド服を着ていても、まったく違和感がない。

 さっきの女の人も、理央が男の子だとは気づいてなかったみたい。


「理央のお父さまは大丈夫なの? セーラー服のコトとか、『お嬢さま部』のコトとか……」

「うーん、許してくれたワケじゃないですけど、今まで以上に空手の練習に励んでますから。あまり強くも言えないみたいで……」

「そうですの。よかったですわ」


 わたしは、ほっと胸をなでおろした。


「あっ……ここゴミが多いですね」


 理央が眉をひそめたのは、街路樹(がいろじゅ)の根元にペットボトルやお菓子の袋が散乱していたからだ。


「こんなに大量にポイ捨てするなんて、許せませんわ」


 わたしは、カバンからゴミ袋と軍手を取りだした。

 ――瞳に映るものも美しくあるように。

『お嬢さま部』のモットーを守るためには、学外であっても、目についたゴミは自主的に拾わなくちゃいけない。

 部員はみんな、こうしてゴミ袋と軍手を常備しているんだよ。

 わたしたちはゴミを拾って、ゴミ袋に入れていった。

 そのとき――。

 カラン、カラン。

 理央の足元に投げこまれた空き缶が、乾いた音を立てて転がった。

 誰っ!? そんなヒドイことするのはっ!?

 キッ! とふり返ると、立っていたのは――礼城中の学ランのホックを外して、派手な色のシャツを首元にのぞかせている、ふたりの男子。
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