お嬢さまですもの!
「――俺たち、もう行きますんで……」


 卑屈な笑みを浮かべて、不良男子たちが腰を上げると。


「待たんかい」


 冷ややかな目を向けて、九条先輩が言いはなつ。


「アンタら、ウチのかわいい後輩をよういじめてくれたな? 『お嬢さま部』に手出して、タダですむと思ってんか?」

「い、いや、俺たち、反省してますんで……」


 目を泳がせる不良男子たち。


「口だけやったら、何とでも言えるわ! ゴミ拾い、アンタらも手伝わんかいっ!」


 九条先輩がドスのきいた声で命じると、不良男子たちは、ビシッ! と背すじを伸ばした。


「は、はいーっ!」

「わかりましたっ!」


 赤シャツと青シャツがあわてて、ゴミ拾いを始めた。

 それを満足げに見つめていた九条先輩は、ふと我に返ったように、
「イヤですわ。わたくしとしたことが、つい乱暴な言葉づかいを……。ごめんあそばせ」
 と、急にお嬢さまになって言った。

 思わずズッコケそうになるわたしと理央くん。


「……九条先輩を怒らせるのだけは止めようね」

「うん……」


 小声で理央くんに言われて、わたしは全面同意した。


「理央くん」

「ん……?」

「さっきは助けてくれて、ありがとう。とってもうれしかったよ」

「いや、当然のことをしたまでだよ」


 心なしか、理央くんの顔は赤い。

 軽くせき払いしたあと、メイドモードになって、理央くんは言い直した。


「桜子お嬢さまを守るためなら、僕は……」
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