夏に願いを
「それにしても、思ってたより激しいスポーツなんだね」
「それ僕も同じこと思った。公園でやってるようなイメージしかなくて」
「それそれ。ジャンプでバシってなるときの音と速さとか思ってたのと全然違っててカッコイイ! なんかめちゃくちゃ速くない?」

叶居さんが少し興奮した様子でジャンプスマッシュの真似をした。

「うん、バドは速いよ。スマッシュのギネス最高速度、時速493kmなんだって。すごいよね」
「え、すご。野球の大谷翔平とか佐々木朗希が165kmとかでしょ」

叶居さんは目を丸くして身を乗り出してきた。近い。シャンプーのいい匂いがした。僕は自分の汗臭さに気づかれたくなくて、少し身を離した。

「え、詳しいね。中高生でもそれより早いよ。先輩のスマッシュで目の前にシャトル飛んでくるとコワイ」
「あはは。ちょうどこないだテレビで見たの。シャトルって?」
「あ、あのボールの代わりに打ちあうやつ」
「へえ、あれシャトルっていうんだ。それにしても500km近いってすごいなぁ」
「まあ、速いから強いってわけでもないけど、速さは強みになるよね」
「あ、それは吹部でもそう。グループ連でふざけて爆速で飛ばしまくる男子とか顧問によく怒られてるけど、それっていざちゃんと演奏ってなったときも指が良く回るってことだし強みだと思う」
「たしかに」
< 19 / 52 >

この作品をシェア

pagetop