夏に願いを
バドは嫌いじゃない。
むしろ好きだと思う。
中学にはこういう球技は軟式テニスか卓球しかなかったし、僕はコンピューター部でミニゲームをプログラミングしていたし、高校もそのつもりでいた。
だけどバド部の練習試合を偶然に見たとき、風を切る音と共にシャトルが凄いスピードで打ち落とされて、稲妻が落ちたのかと錯覚するほどの衝撃を受けた。そう、ちょうど今日の叶居さんと同じように。

思わず入部してしまって、後悔するまでにはそんなに長くはかからなかった。運動部員は皆、自信のあるなしや技術の差はあれど、基本的にコミュニケーションが好きなタイプばかりだった。あまり人付き合いが得意ではない僕は、言うべきことと言うべきでないことの区別に迷って寡黙にならざるを得ず、チームワークの枠から外れたところで最低限のルーティンだけこなす部員になっている。
マネは僕に言えば断らないことをいつの間にか学習したようで、一年のすることをいまだによく任されるけれど最低限の会話しかしたことがないのは他の部員と同じだ。

「カナデ!」
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