夏に願いを
「はい!」
「レシーブノック20本! 10本目とラストはスマッシュ! 」
「はい!」
「気合い入れていけよ!」
「はい!」

コートに入る。
ネットの向こうにシャトルの束を持った部長が立っている。
はじめのうちは打ち返しやすいように投げてくれるけれど、四本目からが本番だ。前後左右に飛ぶシャトルを取りにいく。
部長は視線でヒントをくれるので、見るべきはシャトルではなく部長。ラケットに加わる力や角度にも情報が詰まっている。ノックは相手が打ち返さないから、相手の打ちにくいコースどりまでは考えず、とりあえずラケットで捉えればよくて、僕は取りにいくことだけを考えてひたすらシャトルを追った。

「ありがとうございました!」

コートに散乱したシャトルを自分で回収して交代。元いた場所に戻ろうと視線を向けると、帰ったはずの叶居さんが立っていた。もしかして見られていた? ならもっとスマッシュをカッコよく決めておけばよかった。

近づくにつれ、叶居さんの表情が硬いことに気がついた。

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