夏に願いを
5
お盆の学校閉庁日が明けて『インタイハイ』の日。
たった五日ぶりなのに体育館が妙に新鮮な場所に感じて、天井の高さや床のラインが落ち着かない。まるで入部したてのようなアウェイ感覚で準備運動をしながら、僕はまだ迷っていた。
確かにコンクールで叶居さんたちの演奏を聴いたときは体がうずうずして、帰ってすぐにマンションの裏で素振りをしまくったし、部活も前よりずっと楽しんでやれていたと思う。

コンクール後の部活で僕を見た部長が、上級生になる責任感が出てきたか、と嬉しそうに言ってきた。責任感で変わったわけじゃないけれど、心境の変化でどこかプレイが今までと違って見えたのだろう。
僕は別に練習メニューを変えたわけでもなかったのに気づくなんて、やっぱり部長はすごい。
< 34 / 52 >

この作品をシェア

pagetop