夏に願いを
6
約束の朝。目覚まし時計が鳴る前に目が覚めて、カーテンの隙間が縦に白く光っていた。よし、予報通りの快晴だ。
部屋の窓から眩しい朝日と爽やかな風が押し寄せて、僕の冴えない部屋が輝いて見える。
今の気持ちはコンクールで聴いた課題曲『煌めきの朝』がぴったりで、僕は今、『陽キャの朝』の煌めきを浴びて出掛ける準備をしているんだなと可笑しくなった。

目的地までは電車で六時間かかるから、実際の滞在時間はほんの数時間ほどになる。会って話せる時間が短いのは少し残念だけれど、僕は相変わらず会話が苦手だし却って都合がいいかもしれないとも思った。

電車に乗り込み、ローカル線で叶居さんとLINEしながら向かう時間も楽しい……と思ったのは最初のうちだけで、東京駅で乗り換える時に思いっきり迷ってしまった。東京駅、なんであんなに広いんだ。
おかげで時間と気力を無駄に消費してしまった。しかもスマホも充電切れ。最悪だ。
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