英雄は時を駆ける~エリート将軍の年上花嫁~

結婚初夜の夫婦たち

 シャルルとリリアーヌの結婚は、極秘で行われることになった。
 公爵家嫡男と元帥の養女の婚姻となると普通ならば皆に広く知らせるべきだが、公爵がそれを却下したのだ。

 公爵は、自分が体を弱らせていることを極力内密にしたいという。シャルルの結婚を公表すれば、「これまで職務に専念していたご子息が、なぜ急に?」「なぜ元帥が、そこまで急いで養女に?」と噂になり、結果として自分の不調が知られることになるかもしれないからだ。

 よってリリアーヌは王城の宿舎からシャルルの屋敷へ居を移すものの、皆には「王都内で家を借りたから」と説明した。リリアーヌとシャルルが一緒に暮らしていることを知るのはごく一部の者のみとして、出退勤の時間もずらすことにした。

 そうして、リリアーヌが承諾した日のうちにリリアーヌが書類上リュパン家の養女になることとリリアーヌとシャルルの結婚の手続きが進められ、翌日の昼には二人で聖堂に行き、部外者立ち入り禁止の状態で結婚宣誓書へのサインと新郎から新婦への髪飾りの贈呈が行われた。

 この日はリリアーヌも「引っ越し作業のため」ということで休みをもらい、オーレリアンには「明日、話したいことがある」と伝えている。
 公爵も元帥も、さすがにリリアーヌとシャルルに誰よりも近い存在であるオーレリアンを欺くことはできないだろうし……むしろ味方にした方がいいだろうと考えたため、極秘結婚のことを彼だけには伝える予定だ。

 慌ただしい儀式や引っ越し作業やらを終えて、リリアーヌは夕方になってシャルルの屋敷に移動した。

(ここ、オーレリアンと一緒に遊びに来たことがあるわね……)

 シャルルが数名の使用人と一緒に暮らしているこの屋敷は、公爵邸本邸よりずっと小さい。それでもリリアーヌの元実家の男爵邸――今は他人に売られている――よりも広くて、庭には季節の花が咲き乱れている。
 仕事の後でオーレリアンと一緒にここにお邪魔して、三人で夕食を食べたりカードゲームをしたりしたものだ。
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