英雄は時を駆ける~エリート将軍の年上花嫁~
ちらっとシャルルの横顔を見てから、リリアーヌはうなずいた。
「……分かりました。経緯は何であれ、こうして私を選んでくださったことは本当に嬉しく思っております。……ありがとうございます、シャルル様」
「リリアーヌ……」
「それで、ですが」
リリアーヌがずいっとベッドの上で身を寄せると、寄せた分だけシャルルは後退した。
「な、なんだ」
「夜伽は、今日から始めればよろしいでしょうか」
「はっ!?」
「あいにく私は男性経験がございませんので、最初はご不便をおかけするかと思いますが……どちらかというと痛みには強い方だと思いますし頑張って慣れますので、どうかご容赦ください」
リリアーヌが大真面目に言ってガウンの紐を再びほどこうとすると、「待て!」とシャルルがひっくり返った声を上げた。
「君はそれでいいのか!?」
「いいも何も、公爵閣下もなるべく早い跡継ぎの誕生をお望みでしょう。……もしかしてシャルル様は、私の体ではご不満でしょうか? 先ほどメイドからは、大きくて安定感のあるお尻ときれいな形の胸だと褒めてもらったのですが……」
「リリアーヌ!」
とうとう叱られたため、半分ほど紐をほどいていたリリアーヌは手を止めた。
むっとしてシャルルを見ると、肩で息をする彼はまたしても顔を手で覆ってうつむいていた。
「君がやる気に満ちているのは……その、いいことだ」
「ありがとうございます」
「だが、今日はだめだ」
シャルルははっきりと宣言して、「それ、結んでくれ」とリリアーヌがほどいていた紐をまたしても結ぶよう命じた。
「いいか。君はもう少し、慎重になってくれ」
「……申し訳ございません。私、慎み深くなかったですね」
「いや、だめと言っているわけではない。だが、僕たちは今日結婚したばかりだし……ほら、明日オーレリアンにも話をするだろう?」
「そうですね」
オーレリアンもシャルルのことについてやきもきしているだろうから、話をしなければならない。
(でも、彼と何の関係が?)
不思議がるリリアーヌを見て、シャルルは「君って、こういう人だよな……」とぼやいてから、意を決したようにこちらを見た。
「万が一にでも、君が明日の朝に立ち上がれなくなったらいけない。それに僕も、そこまで気をつけられるかどうか分からない」
「は……」
「分かってくれ、リリアーヌ。僕だって手順自体は知っているが、経験はないし……君に無理をさせないという自信がないんだ」
青色の目に何かちらちらとした炎のようなものを躍らせながら、一言一言丁寧にシャルルは紡ぐ。
リリアーヌは彼の言葉を丁寧に咀嚼して、ああ、と声を上げた。
(シャルル様は、私のことを女性として見てくださっていたのね)
「……分かりました。経緯は何であれ、こうして私を選んでくださったことは本当に嬉しく思っております。……ありがとうございます、シャルル様」
「リリアーヌ……」
「それで、ですが」
リリアーヌがずいっとベッドの上で身を寄せると、寄せた分だけシャルルは後退した。
「な、なんだ」
「夜伽は、今日から始めればよろしいでしょうか」
「はっ!?」
「あいにく私は男性経験がございませんので、最初はご不便をおかけするかと思いますが……どちらかというと痛みには強い方だと思いますし頑張って慣れますので、どうかご容赦ください」
リリアーヌが大真面目に言ってガウンの紐を再びほどこうとすると、「待て!」とシャルルがひっくり返った声を上げた。
「君はそれでいいのか!?」
「いいも何も、公爵閣下もなるべく早い跡継ぎの誕生をお望みでしょう。……もしかしてシャルル様は、私の体ではご不満でしょうか? 先ほどメイドからは、大きくて安定感のあるお尻ときれいな形の胸だと褒めてもらったのですが……」
「リリアーヌ!」
とうとう叱られたため、半分ほど紐をほどいていたリリアーヌは手を止めた。
むっとしてシャルルを見ると、肩で息をする彼はまたしても顔を手で覆ってうつむいていた。
「君がやる気に満ちているのは……その、いいことだ」
「ありがとうございます」
「だが、今日はだめだ」
シャルルははっきりと宣言して、「それ、結んでくれ」とリリアーヌがほどいていた紐をまたしても結ぶよう命じた。
「いいか。君はもう少し、慎重になってくれ」
「……申し訳ございません。私、慎み深くなかったですね」
「いや、だめと言っているわけではない。だが、僕たちは今日結婚したばかりだし……ほら、明日オーレリアンにも話をするだろう?」
「そうですね」
オーレリアンもシャルルのことについてやきもきしているだろうから、話をしなければならない。
(でも、彼と何の関係が?)
不思議がるリリアーヌを見て、シャルルは「君って、こういう人だよな……」とぼやいてから、意を決したようにこちらを見た。
「万が一にでも、君が明日の朝に立ち上がれなくなったらいけない。それに僕も、そこまで気をつけられるかどうか分からない」
「は……」
「分かってくれ、リリアーヌ。僕だって手順自体は知っているが、経験はないし……君に無理をさせないという自信がないんだ」
青色の目に何かちらちらとした炎のようなものを躍らせながら、一言一言丁寧にシャルルは紡ぐ。
リリアーヌは彼の言葉を丁寧に咀嚼して、ああ、と声を上げた。
(シャルル様は、私のことを女性として見てくださっていたのね)