英雄は時を駆ける~エリート将軍の年上花嫁~
オーレリアンにも言ったとおり、結婚したといってもリリアーヌの日常にほとんど変化はなかった。
いつもどおり、シャルルに命じられた仕事を行う。彼は若くて顔もいいからか、王族のお付きや護衛などにもよく呼ばれる。特に国王の末の娘である王女はシャルルのことがお気に入りのようで、彼を指名してあちこちに連れ回していた。
「シャルル!」
夕方になり、リリアーヌが執務室の自分のデスクで書き物をしていると、ドアが開いた。そこに立っていたのは件の、シャルルがお気に入りの王女殿下。
彼女の背後にはお付きがおり、困った顔をしている。王女の我が儘でいきなり執務室に押しかけたのを、申し訳なく思っているようだ。
「シャルル、お話ししましょう!」
「王女殿下、申し訳ございませんがシャルル様は現在、副官と打ち合わせ中でございます」
椅子から立ち上がったリリアーヌがそう言うと、王女はかわいらしい顔をゆがめて頬を膨らませた。
「じゃあ今すぐ呼んできて! シャルルにお仕事を命じるの!」
「王女殿下。いくらなんでも、お仕事中はだめですよ」
お付きがそう言ってなだめるが、王女は頬を赤くしてお付きに噛みついた。
「でもシャルルは、『いつでもなんでも、おっしゃってください』って言ったのよ! このわたくしが、シャルルに用事があるの!」
国王の子どもの中でも王妃によく似ているということもあり、父親が目に入れても痛くないほどかわいがっているという末の王女はシャルルにお熱らしく、ちょっとした用事でもすぐにシャルルを呼び出していた。
なおこの姫君は御年五歳で、シャルルが初恋だと公言している。
(……少しなら大丈夫かしら)
シャルルの様子を見に行こう、と思ったら、背後のドアが開いた。続き部屋からシャルルとオーレリアンが出てきたため、それを見た王女の顔がぱあっと明るくなる。
「シャルル!」
「これは、ごきげんよう姫様」
「ええ、ごきげんよう、デュノア将軍」
それまでのだだをこねた態度から一転して、大好きな人を見つけた王女はこまっしゃくれた雰囲気でドレスを摘まんでお辞儀をした。シャルルの前では子どもらしいところを見せたくないようで、そんな姿にリリアーヌはほっこりしていた。
いつもどおり、シャルルに命じられた仕事を行う。彼は若くて顔もいいからか、王族のお付きや護衛などにもよく呼ばれる。特に国王の末の娘である王女はシャルルのことがお気に入りのようで、彼を指名してあちこちに連れ回していた。
「シャルル!」
夕方になり、リリアーヌが執務室の自分のデスクで書き物をしていると、ドアが開いた。そこに立っていたのは件の、シャルルがお気に入りの王女殿下。
彼女の背後にはお付きがおり、困った顔をしている。王女の我が儘でいきなり執務室に押しかけたのを、申し訳なく思っているようだ。
「シャルル、お話ししましょう!」
「王女殿下、申し訳ございませんがシャルル様は現在、副官と打ち合わせ中でございます」
椅子から立ち上がったリリアーヌがそう言うと、王女はかわいらしい顔をゆがめて頬を膨らませた。
「じゃあ今すぐ呼んできて! シャルルにお仕事を命じるの!」
「王女殿下。いくらなんでも、お仕事中はだめですよ」
お付きがそう言ってなだめるが、王女は頬を赤くしてお付きに噛みついた。
「でもシャルルは、『いつでもなんでも、おっしゃってください』って言ったのよ! このわたくしが、シャルルに用事があるの!」
国王の子どもの中でも王妃によく似ているということもあり、父親が目に入れても痛くないほどかわいがっているという末の王女はシャルルにお熱らしく、ちょっとした用事でもすぐにシャルルを呼び出していた。
なおこの姫君は御年五歳で、シャルルが初恋だと公言している。
(……少しなら大丈夫かしら)
シャルルの様子を見に行こう、と思ったら、背後のドアが開いた。続き部屋からシャルルとオーレリアンが出てきたため、それを見た王女の顔がぱあっと明るくなる。
「シャルル!」
「これは、ごきげんよう姫様」
「ええ、ごきげんよう、デュノア将軍」
それまでのだだをこねた態度から一転して、大好きな人を見つけた王女はこまっしゃくれた雰囲気でドレスを摘まんでお辞儀をした。シャルルの前では子どもらしいところを見せたくないようで、そんな姿にリリアーヌはほっこりしていた。