英雄は時を駆ける~エリート将軍の年上花嫁~
(男爵にとって今回のリリアーヌの負傷はまさに、天から降ってきた幸運だったってことか)
「男爵はおまえに責任を取らせろと言ってきたが、ここでおまえがリリアーヌを迎えに行けば、男爵は味を占めるんじゃないか」
「それは……」
「シャルル。俺が、責任を取る」
シャルルの顔が、上がる。
オーレリアンは微笑み、自分の胸に手を当てた。
「俺が、リリアーヌと結婚する」
「待て、オーレリアン。君は、何を言って……」
「ラチエ男爵は悔しがるだろうが、俺はもうじき親父から爵位を譲られる予定だ。男爵令嬢の嫁ぎ先が伯爵なんだから文句言うなって、説得するさ」
それに、とオーレリアンは椅子から立ち上がったシャルルを見ることなく言葉を続ける。
「リリアーヌを置いていこうと提案しなかった、俺の責任でもあるからな。年下の尻拭いをするのは年長者の務めだ。だから、気にすんな」
「務めだなんて……」
「なあ。うだうだ言うけれどおまえ、自分がリリアーヌを娶れるのか? 公爵を説得できるのか?」
オーレリアンが静かに問うと、シャルルは黙り込んだ。
彼は決して親の命令だけで動く人形ではないが、父親であるデュノア公爵には頭が上がらない。
それに公爵家の次期当主としてあるべき姿、やるべきことが何なのかも嫌というほど分かっているはずだ。
しかもリリアーヌは、顔に傷がある。
女性の顔の傷は、先天的な顔かたちより何よりも「醜い」ものとして扱われる。
顔に傷のある女を、公爵夫人にすることはできない。
だが、伯爵夫人にして――屋敷の中でそっと過ごさせてやることはできる。
言葉に詰まるシャルルに微笑みかけ、その肩にぽんと触れたオーレリアンは苦く笑った。
「……まあ、公爵に勝てないのは俺も同じだよ。だからせめてここは、最善の策を採ろう。俺にとってもおまえにとっても……リリアーヌにとっても」
「っ……」
シャルルはうつむくが、最後までうなずくことはなかった。
「男爵はおまえに責任を取らせろと言ってきたが、ここでおまえがリリアーヌを迎えに行けば、男爵は味を占めるんじゃないか」
「それは……」
「シャルル。俺が、責任を取る」
シャルルの顔が、上がる。
オーレリアンは微笑み、自分の胸に手を当てた。
「俺が、リリアーヌと結婚する」
「待て、オーレリアン。君は、何を言って……」
「ラチエ男爵は悔しがるだろうが、俺はもうじき親父から爵位を譲られる予定だ。男爵令嬢の嫁ぎ先が伯爵なんだから文句言うなって、説得するさ」
それに、とオーレリアンは椅子から立ち上がったシャルルを見ることなく言葉を続ける。
「リリアーヌを置いていこうと提案しなかった、俺の責任でもあるからな。年下の尻拭いをするのは年長者の務めだ。だから、気にすんな」
「務めだなんて……」
「なあ。うだうだ言うけれどおまえ、自分がリリアーヌを娶れるのか? 公爵を説得できるのか?」
オーレリアンが静かに問うと、シャルルは黙り込んだ。
彼は決して親の命令だけで動く人形ではないが、父親であるデュノア公爵には頭が上がらない。
それに公爵家の次期当主としてあるべき姿、やるべきことが何なのかも嫌というほど分かっているはずだ。
しかもリリアーヌは、顔に傷がある。
女性の顔の傷は、先天的な顔かたちより何よりも「醜い」ものとして扱われる。
顔に傷のある女を、公爵夫人にすることはできない。
だが、伯爵夫人にして――屋敷の中でそっと過ごさせてやることはできる。
言葉に詰まるシャルルに微笑みかけ、その肩にぽんと触れたオーレリアンは苦く笑った。
「……まあ、公爵に勝てないのは俺も同じだよ。だからせめてここは、最善の策を採ろう。俺にとってもおまえにとっても……リリアーヌにとっても」
「っ……」
シャルルはうつむくが、最後までうなずくことはなかった。