英雄は時を駆ける~エリート将軍の年上花嫁~
時を駆けた英雄は
「オーレリアン。最近、ポストに妙な手紙が投函されているんだ」
聖王暦四十四年の、冬。
朝の打ち合わせを終えてリリアーヌが執務室を出て行った後で、オーレリアンは上司に呼び止められた。
彼の手に見覚えのある封筒が握られており、笑いがこみ上げそうになるのを必死に堪えたオーレリアンは神妙な態度で「なんだって?」と問う。
「まさか、脅迫状か?」
「いや、そういうのではなくて……」
少し迷いながらもシャルルが言うに、少し前からシャルル宛てのポストに同じ手の者からの手紙が投函されるようになったという。
シャルルの執務室のドアの横には、ポストが三つ並んでいる。
それぞれシャルル、オーレリアン、リリアーヌ用の郵便物を入れる場所で、投函されたものは部屋の内側から取り出せるようになっていた。
「最初の手紙が届いたのは半月ほど前で、それから数日に一度の頻度で送られるようになった」
「そうか。……で? どういう点が『妙』なんだ?」
「……僕のポストに入れられているのに、どう見てもこれはリリアーヌ宛てなんだ」
「なんだ、誤投函か。ならリリアーヌに渡せばいいだろ」
「いや、それが……」
そう言うシャルルの青色の目が、左右に揺れている。
分かりやすく動揺する様を見て、オーレリアンは小さく笑った。
「……ああ、分かった。それ、リリアーヌへのラブレターだな!」
「違っ……あ、いや、きっとそうだと思う」
悔しそうにしつつも認めたシャルルは、今朝届いたばかりの手紙に視線を落とした。
「送り主の名前は書かれていないし、文字に見覚えもない。おそらく城仕えの誰かが送ったのだろうが、ずっと間違えて僕のポストに入れられている」
「じゃあリリアーヌに渡してやれよ。あいつも、城内に自分のファンがいるって分かったら喜ぶんじゃねぇの?」
「差出人不明の手紙なんて、危険で渡せない。それにこの手紙、いつの間にか入っているんだ。誰も執務室に近づいていないはずの時間でも、なぜか入っていて……」
ほう、とシャルルの勘に感心しつつも、オーレリアンは問う。
聖王暦四十四年の、冬。
朝の打ち合わせを終えてリリアーヌが執務室を出て行った後で、オーレリアンは上司に呼び止められた。
彼の手に見覚えのある封筒が握られており、笑いがこみ上げそうになるのを必死に堪えたオーレリアンは神妙な態度で「なんだって?」と問う。
「まさか、脅迫状か?」
「いや、そういうのではなくて……」
少し迷いながらもシャルルが言うに、少し前からシャルル宛てのポストに同じ手の者からの手紙が投函されるようになったという。
シャルルの執務室のドアの横には、ポストが三つ並んでいる。
それぞれシャルル、オーレリアン、リリアーヌ用の郵便物を入れる場所で、投函されたものは部屋の内側から取り出せるようになっていた。
「最初の手紙が届いたのは半月ほど前で、それから数日に一度の頻度で送られるようになった」
「そうか。……で? どういう点が『妙』なんだ?」
「……僕のポストに入れられているのに、どう見てもこれはリリアーヌ宛てなんだ」
「なんだ、誤投函か。ならリリアーヌに渡せばいいだろ」
「いや、それが……」
そう言うシャルルの青色の目が、左右に揺れている。
分かりやすく動揺する様を見て、オーレリアンは小さく笑った。
「……ああ、分かった。それ、リリアーヌへのラブレターだな!」
「違っ……あ、いや、きっとそうだと思う」
悔しそうにしつつも認めたシャルルは、今朝届いたばかりの手紙に視線を落とした。
「送り主の名前は書かれていないし、文字に見覚えもない。おそらく城仕えの誰かが送ったのだろうが、ずっと間違えて僕のポストに入れられている」
「じゃあリリアーヌに渡してやれよ。あいつも、城内に自分のファンがいるって分かったら喜ぶんじゃねぇの?」
「差出人不明の手紙なんて、危険で渡せない。それにこの手紙、いつの間にか入っているんだ。誰も執務室に近づいていないはずの時間でも、なぜか入っていて……」
ほう、とシャルルの勘に感心しつつも、オーレリアンは問う。