ORION
第一章 流星

失恋

「ごめん、やっぱ俺、自信ない。」

片桐鈴、18歳。

人生で3度目の失恋をたった今した。

しかも今日は卒業式。最悪だ。

1年3ヶ月付き合った彼氏とは

今年の春から遠距離、の予定だった。

が、その前にふられてしまったのだ。

「あ、これ。記念に持ってて?」

と私の手におかれた彼氏の第二ボタン。

「こんなものいらないよ」

なあんてかっこいいこといって

ぽいって捨ててしまえばいいものを、

そうできないのが乙女心ってやつなのか。

ぎゅっとボタンを握り締める。

ほんのりあったかい、彼の温度が伝わる。

歯を食い縛り自分に

「泣いたらまけ!泣くな!」

と言い聞かせ、上を向く。

私の気分なんておかまいなしに

空は澄んでいて綺麗な桜が舞う。

ボタンをそっと胸ポケットにしまう。

捨てられないのは今までの思い出が

あまりにも大切だったから。

私はまわりの幸せなカップルをよけ、

親友達の輪のなかへと走っていく。
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