雨のち、恋。
「ねぇ、素直になりなさいな、華恋ちゃん。

私、学生時代の貴女にずっと思ってたことがあるの。

友人たちがそれぞれのカップルで幸せそうに過ごしているのを、貴女は心から応援していたと思うのよ。

それは確実に言えるわ。

その横顔に、何となく哀愁を感じてね。

本心では、友人たちがうらやましかったんじゃない?

自分の手で幸せを掴む皆が」

彼女はそこで言葉を切って、カップに注がれたミルクが混ざったコーヒーに口をつけた。

そのまま一気に飲み干す仕草も、彼女が行うと色っぽさを感じた。

「ずっと他人の恋の応援に徹していながら、本心では。

貴女自身も心を開ける誰かと恋愛したかったんじゃないかしら」

そんな言葉を言われたのは、この瞬間が初めてだ。

何度か、三上への接し方を親友で今は育休中の深月(みづき)に相談したことがあった。

その際には、こんなことは言われなかった。

ただ、学生時代から人の心の機微には聡かった深月のことだ。

彼女の優しさゆえ、気付いていながら言わなかった、私自身で気付くチャンスを潰したくなかった、という可能性もあった。

結果的には人に言われて気付いたことにはなる。
その相手が深月だったか夏南センセイだったか、だけの違いだ。

そんなことを思いながら、私もカップに入ったままのコーヒーを飲み干した。

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