雨のち、恋。
「……はからずも近くにいるウチの弟が、その手助けを出来てるんじゃないか、ってちょっと思ってるのよ。

恋なんて、そんなもんよ。

この人のこと、もっと知りたいな、から始まるんだから。

こんな弟で良ければ、よろしくしてやって?

貴女に憧れて、正瞭賢なんて受かるはずない、という私の反対を押し切って合格したんだから。

その後も、生徒会の副会長までやってたわ。

文化祭で演劇を頑張る貴女に一目惚れしたみたいなんだけどね。

何かあったらいつでも連絡ちょうだい。

式、挙げることになったら貴女がいる式場にしたいから、見学も行きたいし」

言うだけ言って、手早くお会計を済ませた彼女。

休みを貰った分、明日はてんてこ舞いになりそうなので、早く帰って休むと言い残してお店を出た。

私だけじゃなく、弟の三上くんの分まできっちり払ってくれていた。

「気にしないで。
貴重なオフの日に話を聞いてくれたお礼よ。

仕事を思い出させるようなことを聞いて、悪かったわね。

その服、私が着るより似合ってるからあげるわ。

似合う人に着てほしいしね」


降りしきる雨が止んだあとに隙間から覗く太陽のような笑顔が印象的だった。

その顔は、私が学生だった頃に見たものと何ら変わっていなかった。

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