雨のち、恋。
「うげ、マジかよ!」

「超土砂降りじゃん!
傘持ってねーよ」

そんな客たちの声に、睡魔と戦いながら目をやる。

お酒はさほど強くない。

調子に乗って量を飲むと、眠くなるのだ。

確かに、と滝のような雨の降り方だった。

局地的に雨が降るとか、そういえば朝の天気予報で言っていたような気もする。

一瞬で眠気が覚めた。

帰り、どうしよ……

薄いグレーのブラウスに、チュールの白スカートという自分の今の服を思い出す。

このまま雨に打たれたら、服が透けて大惨事になるのは、目に見えていた。

雨が止むまで二次会だ、と盛り上がってきた周囲に呑まれて、二次会に参加している間に雨も止むだろうか。

そんなことを思ってしまう自分がいる。

「まったく。
こういう集まり、ホント好きよね。
いくら花金とはいえ、限度があるでしょうに。

あとは上司の私が何とかするわ。

貴女はもう帰りなさい。

一人じゃ心配だから、三上くんなら送ってくれそうね。

気になるから、進展したらこっそり教えてね。

ちょっといいかも、から始まる恋愛もあるのよ。

これはマッチングアプリで惨敗続きの貴女の同期にも言ったことなんだけどね。

世の中のカップルが皆、貴女の親友たちにいるように小さい頃から仲良かったです、なわけないでしょう?

そんなんだったら、結婚式場は大儲けよ。

付き合ううちに、相手の長所も短所も深く知っていけるものよ。

失敗してもいくらでもやり直せるわ、まだ気力と体力も十分あるんだから」

さすが、私の上司は今の職場の前は支配人をしていただけのことはある。

なおかつ、上司自身も前の旦那とは訳あって離婚しており、バツイチなのだ。

一度他人だった人と籍を入れて、共に生活をした経験は伊達じゃない。

「さぁ、早く帰りなさい。
将来の支配人かも、って期待をかけてる貴女に風邪をひかれて休まれたら、会社としても損失が大きいのよ」

「俺と先輩、大分酔い回ってるんで二次会はパスで。
彼女を家までタクシーで送りつつ、帰りますね。

皆さん、あとは楽しんでくださいねー!

あ、くれぐれも、二次会参加組は週明け二日酔いにならないようにしてくださいねー?

それと、雨に濡れて風邪ひいた、っていうのもなしでお願いしますね?

先輩や同期の姿勢から学ぶこと、たくさんあるんですから」

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