雨のち、恋。
「か、華恋先輩?

急にどうしました?

何か俺、変なこと言ったかな」

「心配しないで。
何か、人がいるっていいなぁ、って思ったらつい、ね。

母校の寮でも知り合いはいたけど、ずっと独りだったし。

親友たちは皆それぞれ家庭を持って幸せそうだし。

なかなかいいものね、人と一緒にいるのも。

ちょっとシャワー借りるわね」

シャワーを借りようとすると、誰かとぶつかった。

「すみません……」

「いいのよ。
ちゃんと前を見てなかった私も悪いし。

って、あれ?
華恋ちゃん?

平気?ウチの弟に何かされてないよね?」

「こちらこそ……
私、相当お酒が回ってたみたいで。
とにかく眠くて。

何も覚えてないですけど、何かされてはないかと。

まだ、そういう関係になるには怖いですし」

話しかけてきたのは、親太朗の姉の夏南(かな)だった。

私も、彼女に世界史を教えてもらった記憶がある。

「あ、似合ってるね!
安心して、パジャマ着せたのも、私だから。
私の着せちゃったけど、サイズは大丈夫そうだね。

あ、遠慮なくシャワー使ってね!」

そう言い残して、夏南さんは私にひらひらと手を振った。

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