パパに会いたいだけなのに!
ショーンの好きなもの、朝早く起きてがんばって作ったのに。

——『何が入っているかわからない食べ物なんて、渡せるわけがないだろう!』

お弁当がダメになってしまったからか、さっきの警備員さんの冷たい言葉を思い出す。
「……たしかに、ショーンにお弁当なんて無茶だったんだ……うぅっ」
小さな声でボソッとつぶやいたら、なんだか悲しくなって涙が出てきてしまった。
「え、君泣いてるの?」
「なんだよ、それ弁当? ダメになっちゃったわけ?」
「はい……っ」
涙が止まらない。
「……ごめんなさ……わたし、もう帰りますっ」
「え? おい!」
部屋を出て行こうとドアに向かったわたしの肩を、拓斗くんが引き寄せて振り向かせる。
「……」
「え?」
わたしの顔を見た拓斗くんは黙ってしまった。
「あの……?」
泣いてボロボロだから、あんまり見ないでほしいのに。拓斗くんの目は本当にきれいで、こんな風にじっと見られたら吸い込まれてしまいそう。
「あれ? 拓斗、なんか顔が赤いんじゃない?」
「は!? 何言ってんだよ。俺はただ、ハンカチかしてやろうと思っただけだ。ほら、そんな顔のまま帰れないだろ?」
彼はハンカチをさし出した。
「……ありがとうございま——」
〝ぐ〜〜〜〟
言いかけたところで、どこかから変な音がした。
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