パパに会いたいだけなのに!
「聞いてました? きっと中身はぐちゃぐちゃなんです! とても誰かに食べさせるなんてできません!」
「俺がいいって言ってるんだからいいじゃん! もーらい!」
彼はわたしの手から、ひょいっとバッグをうばい取ると、さっさとそばのイスに座って、会議用の机にランチボックスを出して開けようとしている。
絶対にひとに食べてもらうような状態じゃなくなってるって思うから、フタを開ける拓斗くんの様子をハラハラしながら見てしまう。
「お、なんだ、全然大丈夫じゃん」
「え?」
思わず近づいて、ランチボックスをのぞき込む。
そしたらやっぱり、予想よりは少しはマシってくらいで、ハンバーグは横だおしになってポテトサラダとくっついてるし、他のおかずも仕切りのカップから飛び出して混ざってしまっている。
「やっぱりダメです、こんなの……」
引っ込めようと手を出した瞬間。
「ウマっ!!」
拓斗くんの興奮したような声が部屋に響いた。
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