パパに会いたいだけなのに!
「おい拓斗、声がでかい」
「あ、悪い。でもこのハンバーグ、超ウマいよ。理澄も食ってみる?」
拓斗くんは大きな目をキラキラ輝かせてる。
「めずらしいな、拓斗がそんな風に言うなんて」
そう言った理澄くんも、拓斗くんからハンバーグをひと口もらう。
「お、たしかにおいしい」
「な! このポテトサラダもめちゃくちゃウマい」
「でもそれ、キュウリが入ってるよ? 拓斗、キュウリ苦手だろ?」
「うん、でもなんかこれはイケる」
「……えっと、一応お塩でもんだり水にさらしたりしてるから、キュウリのイヤな感じは減ってるかなって思います」
感動したみたいに喜んでくれるのが嬉しくて、おずおずと説明してみる。
「へえ、すげえ! 天才かよ」
わあ……満面の笑み。
全然知らなくて申し訳なかったけど、拓斗くんのこんな笑顔を向けられるのは、もしかしてすっごくぜいたくだったりする? 莉子に言ったらどんな反応するだろう。
「んー、でも、このニンジンはイマイチ?」
笑顔から一転、拓斗くんの眉間にシワが寄っている。
「あ、それは……パパの好きなニンジン料理がよくわからなかったから」
「パパ?」
わたしはコクリとうなずく。
「そのお弁当は、パパに渡すために作ってきたから」
「お前の父さんってうちの事務所?」
「はい、ショー——」
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