パパに会いたいだけなのに!
5分後。
「へえ、じゃあ君のママは昔アイドルだったんだ」
「はい。〝虹瀬(にじせ)ひびき〟っていう名前で、Re:fRain(リフレイン)っていうアイドルグループに所属してて」
「聞いたことないな。拓斗知ってる?」
拓斗くんも「知らない」と首を振る。ママの活動期間ってたしかすごく短かったからあまり知られていないのも仕方ない。
「け、けど! とにかく追っかけで不法侵入したかったわけじゃなくて、ショーンに娘だって伝えたくて来たんです! ママに会って欲しいから」
わたしの言葉に、二人はまた顔を見合わせた。
「うーん……君のママがアイドルだったのはわかったけど、君のパパがショーンさんだって言うには証拠が無さすぎるかな」
「え、でも耳が……」
「そんなの、他人だって似てる人はいくらでもいるよ」
理澄くんの言葉に、「たしかにそうだ」って頭が冷えていく。
「……わたし、バカですね」
ショーンがパパだって今もどこかで思っているけど、たしかに証拠らしい証拠がなくちゃ、信じてもらえるわけなかった。
「お弁当だってぐちゃぐちゃにしちゃったし……うう……」
また涙があふれてくる。
「え、おい……泣くなよ。弁当は俺のせいだし」
「ふえぇん……」
なんだか止まらなくなってしまった。
「う……っひっく……」
二人はわたしが泣き止むまで、はげましたり背中をさすってくれたりした。

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