パパに会いたいだけなのに!
「そんなに緊張しなくてだいじょうぶだよ。わあ、サンドイッチなんだね。あ、ポテトサラダもついてる」
理澄くんが微笑みかけてくれる。
彼の笑顔はいつもやさしくて、こっちもつられてニコッとしてしまう。
「おい」
それにひきかえ、こっちの彼は……
「なんで理澄まで食べてんだよ。果音は俺のマネージャーなんだよ」
不満そうな顔の拓斗くん。
「いいだろ? 果音ちゃんは二人分用意してくれてるんだから」
「このサンドイッチ、トマト入ってる」
やっぱり。言うと思った。
この前から『キュウリが嫌い』『ピーマンが嫌い』って好き嫌いだらけだったから。
「そのトマト、すーっごく甘い種類です。ヘタとその周りの青臭いところは丁寧に取ったし、食べてみてください。チーズとの相性、最高ですよ。わたしの自信作です」
莉子もトマトが嫌いだけど、こうすると食べてくれるんだ。
「本当かぁ?」
ものすごく疑った顔のまま、拓斗くんがサンドイッチにパクつく。
「……ウマい」
「ふふっよかった〜!」
この前も結局こうやって『ウマい』っていい表情で食べてくれた。
口が悪いところがあるけど、素直な普通の男の子って感じでついついクスッと笑ってしまう。
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