パパに会いたいだけなのに!
「まあ、僕はいつものことだからね」
「僕は? 拓斗くんは?」
「拓斗はほら、今まで昼ごはん抜きが多かったから。だからアイツの場合は、果音ちゃんのお弁当食べて前より元気って感じだよ」
「そうなんだ」
「うん。好き嫌いの多い拓斗にあんな顔させるなんて、果音ちゃんすごいよ。僕も果音ちゃんの作るお弁当大好きだし」
トップアイドルに『大好き』なんて言われて微笑まれたら、お弁当のことだってわかってても、つい赤くなっちゃう。
わたしは両手で熱くなった頬を押さえた。
「そ、それにしても、よくわたしをユースに入れたりマネージャー見習いにしたり、すんなりできましたね」
「ん? うん、まあ。拓斗が希望したことだからね」
「どういう意味ですか?」
「いや、これは余計な話だった。まあそのうちわかるんじゃないかな」
理澄くんはどこか〝マズい〟って顔で苦笑いを浮かべた。
その時だった。
スタジオの女性スタッフやアイドルの子たちが入り口の方を見てザワザワし始める。
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