パパに会いたいだけなのに!
「え……?」
また、拓斗くんの方を見ると無言でコクリとうなずいた。
またショーンの方を見る。
「で、でもショーンさん、セットはもう変えられませんし、衣装は打ち合わせて決めてますし」
レッグのマネージャーらしき男性が焦った顔で言うのが見える。
「嫌なもんは嫌なんだよ。別の衣装出してこいよ」
意地悪なショーンの言葉に、マネージャーは慌ててどこかに走って行った。
ショーンは置いてあったチェアにドカッと乱暴に腰かけた。レッグの他のメンバーも、ショーンに続くように周りのチェアに座った。
目の前の光景が信じられなくて、思わず言葉を失ってしまった。
「もしかしてショーンって……」
「そ。めちゃくちゃ性格が悪い」
「おい拓斗。果音ちゃんのパパかもしれないのに、さすがにそれは失礼だろ?」
「事実なんだからしょうがないだろ? それよりお前また〝ちゃん〟付けで呼んだ」
わたしの頭の上で、拓斗くんと理澄くんが言い合ってるけど、はっきり言って全然耳に入ってこなかった。

——『めちゃくちゃ性格が悪い』

嘘でしょ?

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