パパに会いたいだけなのに!
「おはようございます!」
「お、拓斗。今日フィリックも出んの?」
「うん!」
事務所の先輩にあいさつに言った拓斗は、人なつっこいって感じのしゃべり方になっている。
「今回のダンスでちょっとむずかしいところがあって」
拓斗くんはショーンの前で、軽く踊って見せた。
「あー多分ちょっとステップが違うな。こんな感じじゃないか?」
そう言ってショーンは立ち上がると、拓斗くんがやったのと同じダンスをすぐに踊ってみせた。しかもすっごく上手に。
「あー、なるほど! さっすがショーン! ダンスの先生よりわかりやすい」
喜ぶ拓斗くんの頭を、ショーンがクシャクシャってなでる。
「後輩のくせに俺のこと〝ショーン〟なんて呼び捨てで呼ぶの、拓斗くらいだぞ。生意気だなー」
「げ、髪グッチャグチャ。ヘアメイクさんに怒られちゃうじゃん」
二人はニコニコ笑い合っている。
「ショーンさんは、昔からよく拓斗にダンスを教えてくれたんだ。特別可愛がられてるよ」
「そうなんだ……」
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