パパに会いたいだけなのに!

Stage5 拓斗の自主練

莉子に事情を説明した次の日の午後。
フィリックの二人は今日はムジカ本社の中にあるスタジオで、ダンスのレッスン中。
お昼を終えてヒマになったわたしは、ムジカの会議室で鳴川さんに夏休みの宿題を見てもらっている。
「わあ鳴川さん、教え方が先生みたい! わかりやすーい!」
「昔、塾でアルバイトをしていたからね」
「なるほど」って納得する。
これならマネージャー見習いをしていても宿題がはかどりそう。
「鳴川さんは、どうしてムジカで働いてるんですか?」
「芸能界みたいな派手な業界にはいなそうかな?」
苦笑いされて、思わずあわててしまう。
「そ、そうじゃなくて! 本当に教えるのが上手で先生みたいだから」
「そうだね。教師もいいなって思っていたけど、こう見えても大学生の頃は雑誌のモデルをしていたんだよ」
落ち着いた見た目の鳴川さんの印象からは正直「意外だ」って思ったけど、口には出さなかった。たしかにスラッと背は高いし、笑うと優しい顔も、メガネの奥の目はキリッとしてる。
「だけど、あるアイドルの女の子に出会って」
「女の子のアイドル?」
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