パパに会いたいだけなのに!
「あ、あんまり会わないから。元気だとは思いますけど、あはは」
大学生の頃ってことは、20歳を少し過ぎたくらい。
ママがわたしを生んだのが22歳のときだから、ちょうどその頃のママに会ってるってこと。
「マ……ひびきさんとは仲が良かったんですか?」
「彼女はアイドルだったけど、担当のヘアメイクさんが一緒でね。昔はみんなでときどきご飯に行ったりしてたよ」
もしかして、この人がパパだったりするのかな?
「今は連絡とらなくなっちゃったけど、あの頃、僕の結婚式にも出てくれて」
「鳴川さんって結婚してるんですか?」
「うん。モデル時代の彼女とね」
照れくさそうに教えてくれた鳴川さんの赤い顔とは反対に、わたしの顔はきっと青ざめてる。
もしかしてママは、鳴川さんがほかの人と結婚しちゃったから、身を引いたんじゃないの? なんて考えが浮かんでしまったから。
「もう4時か。虹瀬くんはそろそろ帰る時間かな」
なんだかこの場にいたくなくて、鳴川さんの言葉にホッとして荷物をまとめる。
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