パパに会いたいだけなのに!
20分後。
「で、なんかあった? なんか顔が暗い」
練習を終えたらしい拓斗くんにするどい質問をされる。
「……じつは——」
さっきのことを説明する。
「鳴川さんが父親ぁ? ないない」
「でも……」
「だってあの人今でも奥さんとラブラブで、しょっちゅうデートしたり電話でいちゃついてるぜ?」
「だからって、わからないじゃないですか」
「まあそうかもしれないけど、果音の母さんが鳴川さんの結婚式に出たって言ってたんだろ? もし果音の父さんが鳴川さんだっていうなら、さすがに結婚式には出ないんじゃないか?」
「……たしかにそうですね」
拓斗くんはいつも冷静な意見をくれる。
「だけど……鳴川さんじゃなくても、パパがママ以外の人と結婚してる可能性もあるって、全然考えてなかったから。わたし、バカだったなぁって——」
大きなため息をついたら、涙がホロリとこぼれた。
「なんだよ、また泣いてんのか」
「な、泣いてないです!」
ゴシゴシ頬をこすって涙をぬぐった。
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