パパに会いたいだけなのに!
「嘘つくなよ、泣いてんじゃん」
そう言って、拓斗くんがわたしの顔をのぞき込んだ。
「笑ってた方がかわいいのに、台無し」
「え!?」
「ほら」
拓斗くんは、なんてことないって顔でハンカチを差し出す。
「あ、ありがとうございます。拓斗くんにハンカチ借りるの、2回目ですね」
変装でかけていたメガネをはずして涙をふく。
「それ、やめねえ?」
「え?」
「敬語。俺らって同い年だろ? 名前も拓斗でいいし」
「そ、そんな。人気アイドルにタメ語で呼び捨てなんて」
「俺がいいって言ってんだからいいんだよ。だいたい果音は俺らのこと知らなくて、普通の中学生だと思ってたんだろ?」
それを言われると、本当に申し訳ない。
「じゃ、じゃあ、ありがとう! 拓斗」
拓斗くんあらため、拓斗の優しさにニコッと笑った。
「絶対、笑ってた方がかわいいな」
そう言って拓斗も優しく笑うから、心臓がドキッて大きくはねたみたいに音を鳴らした。
< 57 / 118 >

この作品をシェア

pagetop