パパに会いたいだけなのに!
「ショーンは女好きだけど、結婚したことはないはずだ。元気出てきた?」
そう言って、拓斗がまた優しく笑った。
心臓が、今度はトクントクンって小さくて速いリズムを刻んでいるみたい。
「拓斗、まだ練習するの?」
少しだけダンスの練習につきあってそろそろ帰ろうとするわたしに対して、拓斗はまだ部屋に残ろうとしてる。
「次はドラマの台本読み。今週は歌番組とかロケとか多くてあんまり時間取れそうにないから」
「え、暗記が得意で簡単に覚えちゃうのかと思ってた」
「だったらいいんだけどな」
今度は苦笑い。
「だって、この前も拓斗は全然セリフ間違えなかったし」
「当たり前じゃん。レオさんがいるのに、ミスって撮影止めてらんねえよ」
だけど、拓斗以外の子たちは……理澄くんですらセリフを何度か間違えてた。
それなのに『当たり前』なんて言えちゃう拓斗って、プロ意識がすごいんだ。

——『器用……か』

この前、拓斗が表情をくもらせた理由がわかった。
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