パパに会いたいだけなのに!
その格好じゃなかったら? 男の子の格好じゃなかったら何?
耳が熱くて、心臓が速くて細かいリズムをきざんでる。
「そういえば」
「な、何?」
「今日はあれないの? スムージー」
拓斗が振り向いて聞いてくる。
「……あるけど」
本当は、莉子にも理澄くんにもナイショでいつ渡そうかって考えてた。
「やった」
うれしそうに笑ってる。
「でも、拓斗は練習しすぎだよ。もう4時になるよ? ちゃんと休んでちゃんとご飯食べなくちゃ」
朝からずっと撮影しててつかれてるはずなのに。
「もうすぐ新曲が出るから頑張らないといけないんだよ」
「ふーん」
「そういえば、今度また歌番組でショーンと共演するんだ。今度は果音も話しかけてみれば?」
「え……緊張するし、ちょっと怖いかも」
「俺も一緒にいてやるから大丈夫だって」
「う、うん」
こんな風に優しくされて、こんな風に頑張ってるところ見せられたら……胸のドキドキがどんどん速くなる。

だけどそのショーンとの共演が波乱を巻き起こすなんて、そのときはちっとも想像してなかった。
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