パパに会いたいだけなのに!
「あ! もし嫌いなものがあったら残してもらってかまわないので」
わたしの言葉に、レオさんはハッとした。
「あ、いや、ちがうんだ。僕の好きなものばかり入っているなと思って、エスパーなんじゃないかってびっくりしたんだ」
「え! そうなんですか? よかった!」
大人の男性の好きなものって、みんな似てるのかな。っていうか、ハンバーグも卵焼きも、好きな人の方が多いよね。
「あ、ちなみにニンジンの炒め物は好きですか?」
このお弁当の中で、ひとつだけよくわからないメニュー。
「いや、あまり食べたことがないな……」
「うーん、やっぱりそうですか……メニューが間違ってるのかな」
「間違ってるって、どういう意味?」
「え? あ、えーっと、なんでもないです!」
パパを探してるなんて、言いふらすことじゃない。
「レオさんって、今度またハリウッド映画に出るんですよね」
拓斗が興味津々で質問する。
「ああ、そうだよ」
「すげー。英語もペラペラなんですよね」
「まあ、演技ができるくらいにはね」
「拓斗は本当にレオさん大好きだなー」
レオさんも、拓斗のうれしそうな無邪気な様子にクスッと笑っている。
「英語ってどうやって勉強したんですか? 俺もいつかは海外に行きたくて」
「もともと海外在住の親戚がいるから、英語は習っていたんだよ。それと、海外進出したときに語学学校にも行ってね」
「レオさんって、一人で海外に行って、オーディション受けまくったんですよね! かっこいいっす!」
「………」
拓斗の言葉に、レオさんは長い髪を耳にかけるような仕草をして遠くを見るような素振りをした。
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