絵本の中のヤンデレ男子は、私のことを逃がす気がない。
◆◇◆
ホーホー……
静まり返った深夜2時。どこかでフクロウが鳴いた。
ギラギラと目を光らせるフクロウが、外から見つめるなか、ハルカは薄暗い部屋の中を進み、扉を開けると、その奥のベッドで小さく寝息をたてているアンナのそばに歩み寄った。
月明かりだけがさす部屋の中、ハルカは、そのベッドに腰掛けると、眠るアンナの頬にそっと指を這わせる。
「アンナ」
ポツリと囁いて、眠りが深いかどうかを確認する。すると、どうやらアンナはぐっくり眠っているようで身動きひとつしなかった。
そんなアンナを見て、ハルカは、どこか楽しそうな笑みを浮かべると、アンナの髪を優しく撫でる。
「やっと、来てくれた」
目を細めて、嬉しそうに呟く。
ずっとずっと待っていたアンナが、やっと、この世界に来てくれた。
すると、ハルカは今日の出来事を思いだした。
あの後、自分に出された料理を美味しそうに食べたアンナは、ベッドが一つしかないことに気づいて、二人でアンナの部屋作りが始まった。
大きな家具を描き出すのに、少し苦戦しながらも、なんとか可愛い部屋を作り上げたアンナは酷くご満悦で、そのあとは、頭を使って疲れたのか、お風呂に入ったあとは、まるで倒れ込むように、ベッドの中で眠ってしまった。
「僕は、一緒に寝たかったんだけどな」
狭いベッドの中で、アンナと一緒に眠りたかった。
そんなことを考えながら、ハルカは眠るアンナを見つめると、その後、胸ポケットから懐中時計を取り出した。
チクタクと時を刻む懐中時計の針。
それを見つめ、ハルカは妖しく微笑む。
「あと……42時間」
アンナの枕元で呟いたハルカの声は、深い深い闇の中に、静かにとけていった。