結婚詐欺師から溺愛されて超迷惑しています
 複数の結婚詐欺を働き数億円を奪った容疑で警察に広域指名手配されていたエヌエル(仮名)を私が逮捕したのは、偶然が重なったためだ。一つ目、私が賞金稼ぎだったこと。二つ目、稼ぎになりそうな指名手配犯の顔写真一覧でエヌエルのご尊顔を拝見した直後だったこと。三つ目、結婚詐欺師エヌエルは自分の仕事を忘れ、私に一目惚れしてしまったこと。あいつは私に言った。
「君を溺愛したい。僕は超ハイスペックだけど、周囲から恐れられている男で、正直に言うと”悪い”一面を持つ人間なんだけど、それでも君を好きになってしまったんだ」
 目の前の男が”悪い”一面を持っていることは確認済みだ。それでも人間違いの可能性はある。念のため、何者かを聞いてみる。
「実は、色々あるんだ。冷酷なドクター、強面警察官、悪の味方と呼ばれる弁護士……そう、相手によって肩書は変えている」
 私はクスっと笑った。
「そんなにいっぱい肩書きのある人、珍しいですね。あなたは、何をなさっているのです?」
 エヌエルは苦笑いした。
「今までは、結婚詐欺を働いていた。いや、それって働くうちに入らないか。うん、今日ここで廃業する。結婚詐欺師は止めるよ。真人間に生まれ変わって、君と正式にお付き合いする」
 OKしていないのにお付き合いすると決められても困る。だが、そんな困惑を顔に出さず、ニッコリ微笑む。それから、あいつの両手を左手で握り締めて、私は言った。
「私が誰なのか、聞かなくていいの?」
「僕が溺愛する女性。他に何かあるのかい?」
 私は隠し持っていた手錠をエヌエルの両手にガチャリを嵌めた。
「私、賞金稼ぎなの。さあ、警察へ行きましょう」
 大人しく警察官に引き渡されたエヌエルは私に言った。出所したら、交際しようと。何を言ってんだか! と私は笑ったけど、模範囚となって刑期が短縮され仮釈放となったと、私に手紙を寄越したときは笑えなかった。私に復讐するつもりなのかと疑ったからだ。だけど、そうではなかった。真面目に仕事をして、君を迎えに行くと書いてあったから驚いた。何をかんがえているのやら。
 しかし自分で超ハイスペックというだけあって、しばらくするとエヌエルは大金持ちになった。結婚詐欺を働いた被害者たちに慰謝料込みで全額を返却しても、まだ余っている。その金を全部あげるから結婚して、としつこいので、私はプロポーズを受け入れた。そして今日が結婚式なのだが……不安はある。これも結婚詐欺かもしれないからだ。でも、私は一銭も貢いでいないから、詐欺ではない。それに、もしも私を騙すようならただじゃ済まさないと脅しているので、大丈夫だと思う、たぶん。
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