悪役教師は、平和な学校生活を送りたい
 リュディガーは笑うと、火魔法で一気に自分のスラックスを乾かした。そして置いたままだった鞄を担ぎ、ぽんとエルヴィンの背中を叩いた。

「ま、ここでオレたちが喧嘩してもそれこそ先生を泣かせるだけだ。今日のところはこのへんにしておこうや」
「なんであんたが偉そうに言うんだ……」
「いいからいいから。……まあ、あの先生はオレたちごときじゃあ簡単には落ちないだろうから、オレたち全員で二年生になってからじっくり攻略することにしようぜ」
「いや別に俺は、あんたと違って……」
「好きになっちまったんだろう? 先生のことが」

 ぴく、とエルヴィンの肩が震えた。
 それを諾の返事だと受け取り、リュディガーはくつくつと笑う。

「おまえ、ほんっとに分かりやすい」
「うるさい」
「でも、気持ちも分かる分かる。オレ、自分は年下のかーわいい子がタイプだと思ってたんだけどな。先生みたいなお姉さんを泣かせるのもいいし、逆にお仕置きされるのも結構いいなーって最近気づいたんだ」
「やっぱあんた、変態」
「変態上等。オレたちも夏になったら十八歳になるんだし、そうなったら思う存分先生を口説こうや」
「だから俺はそういうことはしない」
「はいはい、じゃあオレがテクを駆使して先生を落とすところを、指をくわえて見守っていろよ」
「……」

 じろっと睨むが、自分の耳が赤くなっていることはリュディガーには丸見えだっただろう。

「……とにかく明日、皆で合格するぞ」
「了解了解」

 明日は、進級試験だ。
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