悪役教師は、平和な学校生活を送りたい
 ディアナは、いきなり光が差し込んできたためぎゅっと目を閉ざした。

(な、何……!?)

「チッ……補講クラスのガキか!」

 ひゅん、と闇の剣がディアナの首から逸れたのが音で分かった。風が唸り、フェルディナントが闇魔法で風を打ち払っているようだった。

「先生! 無事ですか!」
「その声は……シュナっ」
「そこまでにしなさい、エルヴィン・シュナイト」

 体を起こして目を開けようとしたら、ぐいっと腕を引っ張られて無理矢理立ち上がらされた。

 こわごわ目を開くと、夕焼け空をバックに小屋の入り口に立つ青年――エルヴィンの視線とぶつかり、彼は険しい表情をほんの少しだけ緩めた。

「先生、生きている……!」
「シュナイト、君……」
「お喋りはここまでだ」

 ひた、と再び刃が喉に当てられる。
 しかもただの鋼ではなくて、あらゆる力を吸い込む闇の力に染められた刃が。

「エルヴィン・シュナイト。どのようにしてここまで嗅ぎつけたのかは分からないが……それ以上動けば、君たちの敬愛するイステル先生の首を刎ねる」
「……あんた、なんだその力……」
「見ての通り、闇魔法だ。……エルヴィン・シュナイト。イステル先生の命が惜しければ、魔法剣を下ろせ。そして、先生の代わりに君が犠牲になるというのなら、先生のことは助けてあげようか」
「っ……やめなさい! シュナイト君、こんな外道の言うことは聞かなくていいわ!」

 ディアナは声を張り上げたが、ぐいっと刃を当てられるとそれ以上言えなくなる。

 これだけ小細工をしてきたフェルディナントが、エルヴィンが剣を捨てたからといってディアナを解放するとは思えない。
 そもそも彼からすると、秘密を知るディアナも現場を見てしまったエルヴィンも、抹消するべき対象なのだから。

「シュナイト君、逃げなさい! すぐに応援を呼ぶのです!」
「でもそうすると、先生が……」
「麗しい師弟愛だね。……それじゃああまり長く待てないし、君たちの大切な先生はここで先に死んでもらおうかな。大丈夫、すぐに君も愛しい先生の後を追わせてあげるからね」
「っ……待て!」

 闇の力が強くなり、息苦しくなる。
 ……だが。
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