悪役教師は、平和な学校生活を送りたい
 補講クラスの生徒全員が進級できたというのは、学校中を驚かせた。

 一番混乱していたのは、ディアナに「全員合格したら補講クラスのあり方を再考する」と提案した本人である校長。
 彼はそれでも、「再考するとは言ったが、必ず撤廃するとは言っていない」と空とぼけようとした結果、堪忍袋の緒が切れた副校長の雷が落ちた。彼は雷属性なので、ディアナには本当に彼の頭の上でバチバチと電撃が弾けているのが見えた。

 しかもそこに、廊下で立ち聞きしていた他の教師たちも詰め寄ってきた。
 多くの者から、「補講クラスがこのままだと、アルノルト先生のような思想になる者が出てきてしまう」「生徒たちが弱者を見下すようになってはならない」「そもそも、補講クラスの生徒にはきちんと実力があると判断された」「むしろ、補講クラス外の生徒でも落第点を取った者は数多くいる」などと訴えかけられた。

 そうして何度も副校長の雷が落ちながら職員会議で話を詰めた結果、補講クラスは撤廃となり、新たに「習熟度別クラス」がもうけられることになった。

 今年の補講クラスの生徒にしても、ツェツィーリエのように魔力は十分だがコントロール力が低い者、エーリカのように実技はまだいいが座学が苦手な者、のように様々なケースが存在する。それにそもそもリュディガーやエルヴィン、ルッツやレーネなどは補講クラスに入れるのとは少し事情が違う。

 そういうことで、教科ごとに苦手分野に集中して取り組めるようにクラスを再編することになった。
 来年度からすぐにというのは難しいので、これから再編の移行期間に入り、数年間は試行錯誤の日々になるだろうと言われている。

 校長も最後までグダグダ言っていたが、最終的には「僕が校長なのに……」と半べそ状態になり、他の厳つい教員たちに囲まれてサインをした書類を国に提出することになった。

 また、クラス編成再考やフェルディナントの処分などですっかり校長は参ってしまったようで、「もう無理です」という言葉を残して退職してしまった。
 だが校長の座にはすんなりと副校長が就くことになり、しかも皆がそれを歓迎したこともあり、校長が代替わりしてもほとんど悪影響は出なかったようだ。

 学校の内部ではいろいろな取り組みがなされているが、進級試験を終えた一年生たちは心安らげる春休みに突入していた。

 この前二年生も卒業していったため、校内にいるのは自分たちだけ。そういうことでまったりとした時間が続いたある日、ディアナは生徒たちを連れて王都にある洒落たレストランに向かった。
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