悪役教師は、平和な学校生活を送りたい

「彼女」はどこへ

 おいしい食事を堪能してたくさんのお喋りもして、食事会は解散となった。

「では、現地解散としましょう。これから遊びに行く人は、門限の十時までには必ず学校に戻ること」

 ディアナが言うと、生徒たちはそれぞれ散らばっていった。
 今はまだ夜の八時くらいなので、女子たちは夜の露店を見て回り、ルッツは実家に寄るそうだ。

「なあなあ、先生。これからオレと一緒に大人の時間でも、どう?」
「十七歳が何か言ってら……」
「うるせぇな、十七歳。悔しければおまえも先生を誘ってみろ」
「いや、俺は……」
「あ、すみません。私、寄るところがあるので」

 ディアナが言うと、顔を突き合わせていた二人は同時にこちらを見て「え?」と声を上げた。

「寄るって……もう暗いんだけど?」
「護衛くらいならするから、一緒に行きますよ」
「うわてめぇ、こういう形で抜け駆けするとか……」
「うるさいな、脳内ピンク男」
「……ええと、申し出はありがたいのですが、ちょっと一人で行きたい場所なので」

 ディアナがやんわりと断ると、最初は怪訝そうな顔をしていた男子二人はやがてほぼ同時にはっとして、頷いた。

「ああ、まあ……そうだよな。レディにも用事はあるもんな、うん」
「……俺、こいつを連れて先に学校に戻ります。放っておいたらこいつ、何をするか分からないんで」
「うわー、男二人で帰路につくとか嫌だわー、むっさいわー」
「黙ってろ。……それじゃあ先生、今日はありがとうございました。また明日」
「ごちそうさまっした。先生も、遅くならないようにしなよ」
「ええ、ありがとうございます。気をつけて」

 ディアナはぽかぽか殴り合いながら去って行く二人を見送り、さて、と振り返った。

(せっかく町に出たんだから……ちょっとでも、調べておこう)

 エルヴィンたちはいいように解釈してくれたみたいだが、実際には「行きたい場所がある」のではなくて「探したい人がいる」だった。

(もう三月も後半なのに、まだヒロイン入学の話が出てこないなんて!)
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