悪役教師は、平和な学校生活を送りたい
 ヒロインの学校生活中に立ちはだかる敵は何人かいるが、ディアナ・イステルはそれほどヒロインを鍛えたりしなくても、イベントが起これば自動的に退場する。
 だが恋愛攻略対象キャラによっては、ディアナにいじめられるヒロインに声を掛けて……という形で恋愛イベントを進めるルートもあった覚えがある。

(でも、理由もなくヒロインをいじめたりしたくない! いっそ、勧誘を断れば済むんじゃないのかしら……?)

 そういうことでディアナは悩んだが、魔法使いたちの卵が在学する名門校からの勧誘を男爵の娘ごときが断れるわけがないと諦めた。

(お父様もお母様も、とても喜んでくださったし……)

 今世の両親である男爵夫妻は人柄がよく……少しよすぎるのが娘として心配なくらいの、優しい人たちだった。

 一人娘であるディアナが結婚より仕事を優先させても「ディアナの夢を応援するよ」と言ってくれたし、スートニエ魔法学校から手紙が来たときも大喜びだった。

(……行かないと、いけないのね。……でもまあ、学校に行ってもヒロインをいじめなければいい話だし)

 恋愛イベントのフラグは何本か折ってしまうかもしれないが、だからといって罪のない少女をいじめた挙げ句にクビになるなんて未来は回避したい。そんなことをすればお人好しな両親をも悲しませてしまうし、今後の男爵家の行く先も真っ暗だ。

 かくして、ディアナ・イステルは迷い悩みながらも、スートニエ魔法学校の講師として仮採用されることになったのだった。
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