悪役教師は、平和な学校生活を送りたい
(まさか、こんなことになるなんて……)

 校長が去った職員室はあまりにも居心地が悪くて、ディアナは荷物をかき集めて逃げるように部屋を飛び出した。

 フェルディナントはこっそりと、「あんな無茶ぶりに頭を悩ませる必要はない。君は、まずは三人進級だけを念頭に置けばいい」と言ってくれた。

(でもそうすれば先生たちから、「あいつは自分が採用されたいがために、見込みのない生徒を見捨てた」「来年度の生徒たちのことは諦めた」と思われてしまう)

 むしろあの校長なら、生意気な口を叩くディアナを黙らせるためにそれくらいのことはしてきそうだ。

 それに前にもエルヴィンに言われたように、下手に六人全員を進級させようとした結果広く浅くなってしまい、結局誰も進級できなかった……という、誰にとっても最悪の結末にもなりかねない。

(……ゲームでのディアナは、どうしたんだろう)

 人気のない廊下に出たところで、ふとそんなことを思った。

「ヒカリン」のショボ悪役だったディアナは、ヒロイン入学時にも学校に残っていた。少なくとも、リュディガー含む三人は進級できたはずだ。

 だが、あれはゲームでの話。

(私は、ストーリーを変えた結果……誰も救われない未来にしてしまっている……?)

 くらっとした。

 問題なくやっていけば、少なくとも惨めな形でクビにはならないと思っていた。
 だがもしかするとこのままでは、ディアナも生徒たちも誰も幸せになれない結末を迎えるのではないか。

(私のやったことは……間違いだった……?)

 ヒロインはいじめないし、六人の生徒たちのこともよく考え、そして自分がろくでもない人生を歩まないように気をつける。

 ……その思いでこの数ヶ月間やってきたことは、間違いだったのか。
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