悪役教師は、平和な学校生活を送りたい

六人いるクラス

 どうなることかと不安だったが、エルヴィンは約束通り翌日朝から教室に現れて、皆を驚かせていた。

「まあ! やっと来ましたのね、このサボり魔!」
「ツ、ツェツィーリエさん、もっと優しく言ってあげようよ……」
「そうそう。ツェリさん、自分の後ろの席がいつも空席なの、地味に気にしてたじゃないですか」
「レ、レーネ! わたくしはそんなこと……!」
「ううん、みんな分かってたわ。六人揃えたことが、ツェリもとっても嬉しいのよね?」
「エーリカまで……!」

 最初は手ひどくエルヴィンを歓迎したツェツィーリエだが、皆にあれこれ言われると次第に真っ赤になり、ふてたようにそっぽを向いてしまった。

 そしてリュディガーは、自分の左隣に座ったエルヴィンの背中をバシバシ叩いていた。

「いやー、本当に来るとはな! あ、ノートが見たければ見せてやるから、言えよ!」
「……まあ、うん、感謝する」

 エルヴィンが教室に入ったときにこの席順を見て、明らかに嫌そうな顔をしたことにディアナも気づいていた。
 だが、リュディガーの隣、ツェツィーリエの後ろというこの席くらいが、エルヴィンにはちょうどいいと思う。

 初めて六人揃った状態で出欠を取り、朝の補講を始める。今日はまず、連絡事項があった。

「皆も知っての通り、十二月半ばには冬のグループ試験があります。その詳しい日程が決まったので、お知らせします」

 そう言ってディアナは、抱えてきた石版を教卓の上に立てた。
 日本の学校だったら一人一枚ずつプリントを配ったりできるだろうが、この世界には輪転機のようなものはまだ存在しない。よって、教師が石版に書いたものを皆が各自ノートにメモするのが主流だった。

「試験期間は十二月十五日から二十日です。一年生の生徒が十二のグループに分かれて、一日に二グループずつ試験を行います。多くの教員が試験に同行するため、この期間中の授業はありません。ただし課題はあるので、試験日以外は自主的に課題に取り組むことになっています」
「え、ええと……先生。僕たちのクラスは本当に解体せずに、この六人で行けるのですよね……?」

 慎重派のルッツに尋ねられたので、ディアナは頷いた。

「はい、間違いありません。他の生徒は十二月の頭にグループ発表となり、そこからグループでの練習を行いますが、補講クラスに関してはこのグループで練習を始めていいとのことでした」
「……ハンデを与えられているようで少々癪ですが、まあいいでしょう。わたくしたちのことを見下す連中の度肝を抜くような成績をたたき出せばいいのですからね!」

 ツェツィーリエが自信満々に言い、その隣のエーリカが首をかしげた。
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