悪役教師は、平和な学校生活を送りたい
 朝の補講時間が終わると、皆は次の教室に移動することになる。

「……ほら、行くぞエルヴィン」

 エルヴィンにすぐさま声を掛けたのは、リュディガーだった。

「多分、他の連中はおまえを見てあれこれ言ってくるだろう。ま、おまえは図太いし我が道を行くタイプだから大丈夫だろうが……念のため、今日は皆で移動しようぜ」
「……そこまでしなくていいんだけど」
「あーら、ずいぶん自信があることね? いいこと? エルヴィン・シュナイト。もし単独行動を取ったあなたが皆から文句を言われた場合、わたくしたちにもその累が及ぶ可能性がありますのよ」
「う、うん。それくらいなら、みんなで移動した方が安心できるよね」
「……いや、本当にいいって。あんたらの方が迷惑だろう」
「そんなことないよ。私たちは六人で頑張ってますってアピールした方が、いいと思うし」
「そうよ。みんなで行けば怖くないわ」
「……別に、怖いわけじゃないけど……ああ、もう、分かったよ」

 五人に言われて最後にはエルヴィンの方が折れたようだ。
 彼が困った目でちらっと見てきたので、ディアナは笑顔を返してやった。

「私もそれでいいと思いますよ。……よかったですね、シュナイト君。皆、あなたと一緒に頑張りたいそうですよ」
「……はぁ、分かりましたよ。皆も、面倒くさくなったら離れてくれていいからな」
「ふんっ。一度決めたことは曲げないのがわたくしですからね。覚悟なさい!」
「あんたはもうちょい、素直になれよ。……んじゃ、先生。オレたち行ってくるぜ」
「はい、行ってらっしゃい。手が空いたら様子を見に行きますからね」

 ディアナが言うと、ルッツとレーネは「先生が見るなら……頑張ろう」「うん! あ、先におやつ食べておこっと」と前向きに言い、ツェツィーリエは「わたくしの勇姿をご覧なさいね!」と自信満々に、エーリカは穏やかな微笑みを浮かべ、エルヴィンとリュディガーは互いの頭を叩きながら部屋を出て行った。
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