悪役教師は、平和な学校生活を送りたい
 授業の後片付けを終えたディアナは早速、一年生が参加している魔法応用の授業を見に行った。

(皆、魔法剣の扱いがだいぶ上手になったと思うけれど……)

「おっ、イステル先生だね」
「あ、お疲れ様です、アルノルト先生」

 校舎を出ようとしたところで、廊下の反対側から歩いてきていたフェルディナントと合流した。

「先生もこれから、表へ?」
「うん、実技系はどうしても負傷者が出やすいし、今は医務室も空いているからね」
「そうですか。……実はですね、今日はめでたく生徒六人が揃いまして!」
「……えっ? あのエルヴィン・シュナイト君も来たのか?」
「はい! 朝の補講時間も、皆と一緒に頑張っていましたよ」

 ディアナが嬉々として報告すると、フェルディナントはしばし考え込むように横を向いていたが、やがて「なるほどね」と笑顔を向けてくれた。

「彼にも事情があるとのことだけど、君の熱意が通じたってことだろうね」
「そう……だと嬉しいです」
「きっとそうだよ。……おっ、あれが一年生たちかな?」

 フェルディナントと並んで訓練場に向かうと、そこには既に一年生の生徒たちが集合して教師の話を聞いていた。皆、制服であるジャケットやスカートではなくて動きやすそうな服に着替えている。
 体操服の一種だろうが、日本の学校のジャージよりもむしろファンタジーに出てくる騎士のようなデザインなので、魔法剣を腰に提げた姿と衣装がなかなかマッチしていた。

(これで体操服だったら、ちょっとがっかりかもね……)

 生徒たちが前世勤務していた中学校の紺色ジャージを着ている姿を想像すると、おかしいような微笑ましいような気持ちになる。

 ディアナとフェルディナントが並んで訓練場に来ると、魔法応用担当の教師はこちらを見て会釈をしただけだったが、生徒の中にはざわつく者もいた。

「……あれって、補講クラスの担任だよな?」
「ああ、あれじゃない? 今日はサボり魔王も来てるし」
「見てよ、あの先生。フェルディナント先生と仲よさそうにくっついて!」
「いやらしいわよねぇ」

(いや、アルノルト先生との距離は十分にあるし、そんな想像しないで先生の話に注目してほしいな……)

 補講クラスの六人たちも、ちらっとこちらを見た。レーネやエーリカなどはディアナを見て少し表情が明るくなったが、ツェツィーリエに背中を叩かれ慌てて前を向いていた。
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