悪役教師は、平和な学校生活を送りたい
 傷つき倒れる生徒たちの頭上から、ふわりと暖かな光が降り注いだ。
 象魔物がビクッとして後退する中、優しい光の粒を受けたリュディガーたちが起き上がり、驚きの顔で周囲を見ていた。

(あれは……回復魔法!?)

「アルノルト先生……?」
「いや、僕ではない」

 振り返るが、まだディアナを拘束したままのフェルディナントが魔法を使えるはずがない。
 彼も驚いたように周囲を見回していたが、やがてふわりと暖かな風が吹き抜けた。

「……悪い。遅くなった」

 とん、と光の壁の向こうに着地したのは、赤茶色の髪を持つ青年。
 彼を見て、リュディガーが血をペッと吐き出し乾いた笑いを浮かべる。

「は、はは……遅ぇよ、この馬鹿野郎」
「すまない。足止めを食らっていた」

 青年――エルヴィンはそう言うと、さっと手のひらを仲間たちの方に向けた。
 優しい光の雨を受けて、皆はおっかなびっくりしつつ立ち上がる。

「聖属性魔法……?」
「エルヴィン、あなたいつの間に第二属性を……?」

 皆がつぶやくが、突然エルヴィンはぐっと胸元を押さえると倒れ込んでしまった。

「お、おい!?」
「……悪い。全力で戻ってきたし慣れない魔法をフルパワーで使ったから、ちょっと動けない……」
「……本当に、馬鹿野郎だ」

 リュディガーは笑うと座り込んだエルヴィンの背中を一発殴り、象魔物に向かって魔法剣を構えた。

「……そこに座り込んでいる馬鹿への説教は後にして、このデカブツを今度こそ倒すぞ!」
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