悪役教師は、平和な学校生活を送りたい
 すぐに魔物の死骸が撤去され、難しそうな顔の校長たちより、「補講クラス六人全員合格」の言葉をもらうことができた。

 その後、エルヴィンの回復魔法を受けたとはいえ、体力までは戻っていないため生徒たちはフェルディナントの治療の後にすぐに森にある宿舎に運ばれた。
 普通は自力で学校まで帰るまでが試験なのだが、「補講クラスの生徒は本当によく頑張りました」と他の教師陣も認めてくれたため、特別に宿舎の利用を許可されたのだった。

 ちょうど、今日の試験はこのグループで終了だ。ディアナはフェルディナントたちから、「今日は七人で過ごせばいいよ」と言われたため、宿舎の棟を一つ借りて休ませてもらうことにした。

 女子三人は手当を受けて着替えると、すぐに寝てしまったようだ。一人一部屋あてがえたのだが、三人は離れるのを嫌がった。
 結局、二人用ベッドに三人で寝る形になったので狭そうだが、皆の寝顔は幸せそうだった。

 ツェツィーリエたちが眠ったのを確認して、ディアナは女子部屋の鍵を閉めた。ちょうど向かいの部屋から、リュディガーとエルヴィンが出てきたところだった。

「先生、ルッツも寝たぜ。あいつ、着替えの途中から眠りこけたからオレたちが着替えさせる羽目になったが……」
「ありがとう、二人とも。疲れているでしょうし、ゆっくり休んでください」
「おう、そうさせてもらうよ」

 リュディガーは頷くと、隣に立つエルヴィンを見た。

「……おまえにもいろいろ言いたいことはあるが、おまえの回復魔法で俺たちが助かったのは事実だし……おまえも、遅れたくて遅れたわけじゃねぇんだろ?」
「ああ。……昨日の夜には帰れる予定だったんだ」
「……分かったよ。そのへんの事情、明日にはちゃんと皆に言えよ」

 リュディガーはやれやれと肩を落とした後、「ちょっとなんか食ってくるわ」と言って食堂に下りていった。フェルディナントたちが食料や飲み物などを分けてくれたので、腹が減ればそれらを摘まめばいいだろう。

(……さて、と)

「今日はお疲れ様でした、シュナイト君」

 ディアナが向き直って言うと、エルヴィンは難しい顔で頷いた。

「……はい。先生、遅刻して……本当に申し訳ありませんでした」
「……一連のことについて、教えてくれる?」
「……もちろん」

 そうしてディアナはエルヴィンに誘われて、一階にある談話室に向かった。

 暖炉には、先ほどリュディガーが点けてくれた火が灯っていて温かい。
 ソファに座るとエルヴィンがいつぞやのように風魔法で壁を作ったため、ディアナは背筋を伸ばした。

(周りに音が聞こえないようにする、ってことは……)
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