悪役教師は、平和な学校生活を送りたい
「これは譲歩だぞ。あの連中のうち半数でも進級できれば十分すぎるくらいだ、ということだと思え」
「……」
「文句でもあるか? 男爵家の娘に過ぎないおまえを採用してやったのは、僕だ。おまえは従順に僕の命令に従えばいいんだよ。それとも、もう初日でクビになりたいのか? おまえの両親や領民が恥を掻いてもいいのか?」

(はぁ!? お父様やお母様たちを脅しの材料にするの!?)

 思わずちらっと副校長を見ると、彼は唇を引き結んでディアナを見つめ返してきた。
 副校長の態度からすると彼も「補講クラス」のあり方には少々の疑問は抱いているものの、校長には逆らえないのだろう。

(確かこの学校は、今の校長の祖父が設立したもの。それからずっと世襲制らしいから、副校長も校長には何も言えないのかも……)

 少なくとも、ここで校長の物言いに反対してくれるわけではなさそうだ。

(ただでさえお父様やお母様には我が儘を言っているというのに、私の都合で恥を掻かせるなんて……絶対に、嫌)

 ディアナはしばし黙った後に、頷いた。

「……分かりました。未熟者ですが、一年補講クラスの担任を拝命させていただきます」
「ああ、そうしろ。半年後の進級試験の合格者が半数以下だったら、おまえ、速攻クビだからな」

 そんなことを言う校長は薄ら笑いさえ浮かべており、ディアナの背中にゾクッと寒気が走った。
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