悪役教師は、平和な学校生活を送りたい

冬のダンスパーティー

 冬のグループ課題において、補講クラスの六人は全員無事合格をもらえた。

 一時は壊滅しかけたし遅刻者もいたが、それでも問題児の集まりだと言われていた補講クラスの生徒が全員無事で――しかも変異種相手にも最後まで戦ったというのは、学校のあらゆる者にとっても驚きだったようだ。

「噂になっているよ、先生」

 職員室で授業準備をしていると、フェルディナントに声を掛けられた。彼は先ほどまで魔法実技の授業に加わっていたからか、白衣ではなくて男性教師用のローブ姿だった。

「一年補講クラスの生徒が、変異種を倒した。彼らがこれだけの成果をたたき出せたのは、担任であるイステル先生のおかげだ、ってね」
「うーん……子どもたちが評価されるのは嬉しいことですが、私についてはちょっと触れないでほしいです」

 というのも、ディアナは変異種相手にも最後まで戦おうとする生徒たちに、「降参しなさい」と命じたのだ。

 六人とも、「先生の気持ちはよく分かりますよ」と言って流してくれたが、あれは生徒を信じていないも同然の行いだった。
 だから、ディアナが褒め称えられるべきではない。

 だがフェルディナントは柔和に微笑み、そっとディアナの背中に触れてきた。

「間違いなく、君のおかげだよ。あのとき……君が必死になって生徒たちに訴えかけたから。違反になったとしてもとにかく生徒の命を守りたいと思っていたから、皆はいっそう頑張れたんだ。あの場に君がいなかったら――『あなたたちの命が何よりも大事だ』と訴えてくれる人がいなかったらきっと、あの子たちは魔物を倒せなかっただろう」
「……」
「それに、僕も面白いものが見られたしね」
「面白いもの?」
「……校長、結構へそを曲げているみたいなんだ。自分一人が悪者扱いされるのが嫌なんだろうねぇ」

 フェルディナントはこっそりと笑っている。

 確かに、あの場で最後まで生徒たちの援護に反対したのは校長だけだった。
 結果として校長の「最後まで戦わせろ」という判断が正解だったわけだが……あれはさすがに、冷酷すぎると言われても仕方ないだろう。

(アルノルト先生、あまり校長のことが好きじゃないのかしら……?)

「僕もなんだか嬉しいよ」と言って去っていったフェルディナントを見送り、ディアナは立ち上がった。

 先ほど四時間目の基礎教養の授業が終わり、そろそろ六人が補講クラスの教室に下りているはずなのだが――
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